
DX人材不足はなぜ起きる?原因と中小企業がとるべき対策
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DX推進の必要性は理解しているものの、担える人材が社内におらず、採用しようにも応募が集まらないという状況に直面している責任者は少なくありません。求人票を出しても反応がなく、外部に相談すべきかどうかも判断できないまま、プロジェクトだけが先に走り始めているケースもあります。DX人材が確保できない背景には、採用市場の競争だけでなく、そもそも求める人材像を定義できていないという構造的な問題が潜んでいます。この記事では、DX人材とはどのような役割を指すのかを国が示す指標から整理したうえで、人材不足が起きる原因を分解します。さらに、自社育成、正社員採用、外部人材の活用という3つのアプローチを比較し、中小企業が現実的に取りうる進め方を解説します。
DX人材とは?国の指標が示す役割の広がり
対策を考える前に、DX人材という言葉が何を指すのかを確認しておきましょう。定義が曖昧なまま採用や育成に着手すると、そもそも誰を探しているのかが社内で揃わないまま時間が過ぎていきます。
デジタルスキル標準が示す6つの人材類型
経済産業省とIPAは、DXを推進する人材の役割と必要なスキルを整理した「デジタルスキル標準」を策定しています。2026年4月16日に公開されたver.2.0では、DX推進スキル標準の人材類型として、ビジネスアーキテクト、デザイナー、データサイエンティスト、データマネジメント、ソフトウェアエンジニア、サイバーセキュリティの6つが示されました。ver.2.0ではデータマネジメント類型が新設され、デザイナー類型にコミュニケーションデザイナーが加わるなど、求められる人材像が見直されています。DX人材という一語には、これだけ異なる専門性が含まれています。
| 人材類型 | 主に担う領域 |
|---|---|
| ビジネスアーキテクト | 事業の構想を描き、変革の推進を担う |
| デザイナー | 製品やサービスの体験を設計する |
| データサイエンティスト | データの分析とモデルの構築を担う |
| データマネジメント | データの整備と管理の仕組みをつくる |
| ソフトウェアエンジニア | システムの開発と実装を担う |
| サイバーセキュリティ | セキュリティの確保と対策を担う |
参考:独立行政法人情報処理推進機構「デジタルスキル標準」
https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/dss/index.html
DXプロジェクトマネージャーはどの役割にあたるのか
求人でよく見かけるDXプロジェクトマネージャーという呼び方は、企業によって指す範囲が異なります。事業構想から関わる役割を想定している企業もあれば、決まった計画を進行管理する役割を想定している企業もあります。デジタルスキル標準の類型でいえば、事業の目的を描き、関係者を巻き込んで変革を推進する役割はビジネスアーキテクトに近いといえます。求人票を書く前に、自社が求めているのがどちらなのかを言葉にしておくと、候補者との認識のずれを防げます。
一人ですべてを担える人材はほとんどいない
6つの類型を見て分かるとおり、DXの推進に必要なスキルは領域ごとに大きく異なります。データ分析に強い人が、業務プロセスの再設計や組織の巻き込みにも長けているとは限りません。それにもかかわらず、DX人材を1人採用すれば解決すると考えてしまうと、採用の難易度は跳ね上がります。まずは自社のDXがどの段階にあり、いま不足しているのがどの類型なのかを特定することが、確保に向けた出発点になります。実際の現場では、一人の人材が複数の類型にまたがって動くこともありますが、それは本人の経験の幅によるものであり、最初から前提にできるものではありません。求人票に必要なスキルを並べるほど応募のハードルは上がるため、どの領域を最優先で埋めたいのかを絞り込むことが、結果として採用の成功率を高めます。
DX人材不足はなぜ起きるのか|3つの構造的な原因
人材が確保できない理由を採用市場の厳しさだけに求めると、対策を誤ります。実際には、社内の準備段階に起因する要因も大きく関係しています。3つの原因に分けて整理しましょう。
求める人材像が定義できていない
最も多いのが、どのような人材を求めているのかが社内で固まっていないまま採用活動を始めてしまうケースです。DXを推進したいという目的は共有されていても、解決したい課題が業務プロセスの非効率なのか、データが活用できていないことなのか、顧客接点のデジタル化なのかによって、必要な人材はまったく異なります。要件が曖昧なままでは、応募者を評価する基準も定まらず、結果として決め切れないまま時間だけが経過します。
採用市場で獲得競争が起きている
デジタル領域の実務経験を持つ人材は、多くの企業が同時に求めています。知名度や報酬水準で優位に立ちにくい中小企業では、求人を出しても応募が集まりにくいのが実情です。仮に採用できたとしても、より条件のよい企業へ移るリスクは残ります。採用という手段だけに依存すると、決まるまで事業が止まり、決まった後も定着という別の課題を抱えることになります。
育成の担い手が社内にいない
自社で育てるという方針も、教えられる人がいなければ成り立ちません。既存社員に学習の機会を提供しても、実務で使える水準に到達するには実践の場と、その取り組みを評価できる人が必要です。IPAは毎年、企業のDX推進状況を調査した「DX動向」を公開しており、2026年7月30日に公開された最新版でも、DXを推進する人材の過不足が調査項目として扱われています。育成には一定の期間がかかるという前提で計画を立てることが欠かせません。
参考:独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2026」
https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/dx-trend-2026.html
DX人材を確保する3つのアプローチを比較する
確保の手段は、自社育成、正社員採用、外部人材の活用の3つに整理できます。どれが優れているということではなく、必要な時期とかけられる時間によって適した手段が変わります。
自社育成|時間はかかるが組織に定着する
既存社員を育てる方法は、自社の業務や文化を理解した人材が育つため、長期的には最も安定します。デジタルスキル標準は、DXリテラシー標準とDX推進スキル標準の2つで構成されており、全ビジネスパーソンが身につけるべき内容と、推進人材に求められる内容が分けて示されています。育成計画を立てる際の指針として活用できます。一方で、実務で成果を出せる水準に育つまでには相応の期間が必要であり、いま動いているプロジェクトには間に合わないという制約があります。
正社員採用|定着すれば強いが時間と競争がある
正社員として採用できれば、継続的に自社の課題へ向き合ってもらえます。ただし、母集団の形成から選考、内定、入社までには一定の期間が必要で、専門性が高いほど難易度は上がります。採用広告費や紹介手数料といった費用も発生します。短期間で即戦力が必要な局面では、採用を待つ間に事業機会を逃してしまうおそれがあることを踏まえて判断する必要があります。
外部人材の活用|必要な時期に専門性を確保できる
外部人材を業務委託で活用する方法は、着手までの速さが利点です。必要な類型の専門性をピンポイントで確保でき、プロジェクトのフェーズに応じて関与の度合いを調整できます。一方で、契約が終われば関係も終わるため、社内に何も残らない進め方をすると、次の課題が出るたびに同じ依頼を繰り返すことになります。どこまでを外部に任せ、何を社内に残すのかを最初に設計しておくことが重要です。
| アプローチ | 着手までの速さ | 費用の性質 | 社内への定着 |
|---|---|---|---|
| 自社育成 | 実務水準まで時間がかかる | 研修費と社員の稼働時間 | 最も定着しやすい |
| 正社員採用 | 選考から入社まで期間が必要 | 採用費と固定人件費 | 定着すれば継続的に貢献 |
| 外部人材の活用 | 条件が合えば短期間で開始 | 稼働量に応じた変動費 | 設計しだいでノウハウが残る |
中小企業が現実的にとるべき対策
3つのアプローチは、どれか一つを選ぶものではありません。時間軸の異なる手段を組み合わせることで、事業を止めずに体制を整えられます。中小企業が取りうる進め方を整理します。
まず解決したい課題を言語化する
採用も育成も外部活用も、何を解決したいのかが決まっていなければ空振りになります。DXを推進したいという表現を、受注処理に時間がかかっている、顧客データが部門ごとに分断されている、といった具体的な課題まで落とし込みましょう。課題が具体化すれば、必要な人材類型も自然と絞り込まれます。この工程を飛ばして求人を出すことが、応募が集まらない原因になっている場合も少なくありません。
期間限定で専門スキルを導入する
短期間で即戦力が必要な局面では、期間を区切って外部の専門性を導入する発想が有効です。プロジェクトの立ち上げ期に集中して関与してもらい、設計と初期構築を終えた後は社内で運用するという進め方であれば、固定費を増やさずに事業を前に進められます。採用が決まるまで待つのではなく、外部人材に動いてもらいながら並行して採用や育成を進めるという時間の使い方もできます。
外部人材の活用と社内育成を組み合わせる
最も現実的なのは、外部人材に方針の設計とレビューを担ってもらい、実務は社内の担当者が手を動かす形です。担当者は実践を通じて学べるため、育成の機会にもなります。外部人材が去った後も運用を継続できる状態をつくれれば、同じ依頼を繰り返す必要がなくなります。短期の課題解決と中長期の人材育成を同時に進められる点で、限られた資源で動く企業には適した進め方といえます。
まとめ:DX人材不足は確保の順番を見直して解決する
DX人材という言葉には、経済産業省とIPAのデジタルスキル標準が示すとおり、ビジネスアーキテクトからサイバーセキュリティまで性質の異なる複数の専門性が含まれています。一人ですべてを担える人材を探そうとすると採用の難易度は跳ね上がり、求める人材像が曖昧なまま募集を続けても応募は集まりません。人材不足の原因は採用市場の競争だけでなく、人材像を定義できていないことと、社内に育成の担い手がいないことにもあります。対策としては、解決したい課題を具体的な言葉に落とし込んだうえで、自社育成、正社員採用、外部人材の活用という時間軸の異なる手段を組み合わせることが現実的です。一方で、どの類型の人材がいま必要なのかを社内だけで判断しきれない企業も多いのが実情です。キャリーミーでは、デジタル領域の実務経験を持つプロ人材と企業を、業務委託という形でマッチングしています。DX推進の体制づくりでお困りの際は、お気軽にご相談ください。
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